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おおぬきたつや の ブログ玉手箱♪(はてな版)

自称・マルチクリエイター おおぬきたつや のブログです♪

『メタル・キッズ・アーミー』 ‐第1話‐ ♯7 

メタル・キッズ・アーミー

       ‐Metal×Kids×Army‐ 
      『メタル・キッズ・アーミー』 

  ‐第1話‐  ♯7 

 

「まあな…はは! たぶん、驚くぞ、ふたりとも、な!」

「?」

 どこか口もとのにやけた、何やらたぶんに含むところがあるような物言いだが、さっぱりわからぬ小学生はどちらも不思議に見張ったふたつの瞳を見合せるばかりだ。
 そんな彼らに、また春志がにやけた視線でもっていずこか遠くの方を示す。

「おっ…ほら、来たぞ? おまえたちがお待ちかねの人物のご到着、だ!」

「ああ、本当、噂(うわさ)をすれば…ね!」

 夏香もまた小さなため息つきながら、このC・Rのまた一方の通用口から現れては急ぎ足でこちらに向かってくる、あるひとりの白衣姿の男性を見やる。

「…おお! 大地に洋太、もう来ていたのか。そうかそうか、偉いぞ、ふたりとも、このおじいちゃんの言うことをきちんと聞いていたのだな!」

 などと言いつつもこっちにつかつかと歩み寄るのは、やせ形で白髪の目立つ髪を短くまとめた初老の紳士だった。
 その見かけ的には。
 銀縁(ぎんぶち)のメガネにやや神経質できまじめそうな真顔が、もはやいかにも科学者らしい雰囲気を醸(かも)しているが、それもそのはず――。
 何を隠そうこの人物こそが、うわさの研究所所長、にしてふたりの小学生(厳密には、大地の)のおじいちゃんたる、四季博士、そのひとなのである。
 確かもう還暦などはとっくに過ぎていたはずだが、すこぶる元気な様子で羽織った白衣で風を切りながら実に颯爽(さっそう)と闊歩(かっぽ)している。
 靴音も高く響かせては四人の前に立つのだった。
 この博士は普段は至って厳格な態度と傍(はた)から見て冷血さを感じさせるくらいに醒(さ)めた表情でいるのだが、さすがにかわいい孫たちの前ではその険しい顔つきを幾分かは和らげることとなる。



「よしよし、ふたりとも良く来たな! おじいちゃんは嬉しいぞ」

「うん! ぼくらガッコーからすぐ走ってきたもん! そんでそんで、今日はなにしてあそぶのっ?」

 裏では何を考えているのやら、白衣を着た好好爺(こうこうや)のしたり顔に、無邪気な洋太がやんちゃな笑顔で応じる。

「おじいちゃん、ぼくたちに見せたいモノって、なあにー?」

 おっとりした大地もそう聞くのに、四季博士は平時では考えられないくらいのにこやかな笑みをその顔に湛(たた)えながらに、言った。

「うん。いいものだよ、とてもな…! そうだ、ふたりとも必ずや喜ぶことだろう。ついてはつい今しがた、大体のところでこの準備が完了したので、もうすぐにでも見せてやれるぞ。それでは、さっそく見てみるかな?」

「うんっ、みたいみたいっ!!」

 はっきりそれとは言わずにややもったいつけた言いように、興味をそそられるふたりは大きくこの頭をうなずかせる。
 それには博士もしごく満足げにうなずきつつにだ。
 さっさとみずからの踵(きびす)を返してはお子様たちにもこれについてくるように促す。

「うむ。それではただちに参るとしよう。実を言うとこの下なのだが…ああ、それと当然だが夏香と春志、お前達も一緒に来るように…!」

 満面の笑みから瞬時に普段の無表情(ポーカーフェイス)に切り替えて、おのれの娘と息子に指示もする。

「へいへい…」

 とりあえず了解した春志がだるそうにして椅子から立ち上がるが、これに厳格な父親前とした口調で博士からはクギを指されることとなる。
 本人は若干、その肩をすくませるのみだが。

「…春志よ、もう分かってはいると思うが、今日は記念すべき特別な日なのだぞ? お前もそんなだらしなくしていないで、きっちりとみずからの仕事をこなすように! もちろん、夏香もだ…!」

「はは、りょーかい…!」

「うむ。それでは――」

 四季博士はふたりの児童を従えてエレベーターホールへと向かう。
 その後をふたりの兄妹も追いかけるのだが、第二研究棟をこの最上階から一気に2階へと降りるエレベーターの中で、内心で思うところが多々ある夏香は父に向けて聞いた。

「…ねえ、父さん。ずいぶんとはりきっているようだけど、とうとうあの無茶な計画を実行に移すの? でもわたし、とっても心配だわ。くれぐれも無理なことは、初回から無謀なことはしないわよ、ね?」

 控えめな口調でも強く念を押すかにしたその実の娘の気がかりそうな言葉である。だがこれにも博士は至って大まじめな面を向けるのだ。

「ん、無茶とは何だ? ましてやこの父のすることに、無謀だなどとは…! 案ずることなどありはしない。それよりも夏香、ここでは父さんなどではなく、博士、もしくは所長と呼ぶようにつねづね言ってあるだろう?」

「…………」

 夏香は答えない。
 代わりにこの視線をつと逸らせつつ、ひどいしかめっ面で内心の思いを毒づくのだった。

「…まったく、じぶんは何かと父親面しておいて、何が博士、よ? 理論いたって無茶苦茶なクセに! …あっ、いや、なんでもないわ!」

「?」

 ちょっと声に出ていたので、すぐ側にいた大地がこれを不思議そうに見上げることとなる。
 その目線をややバツの悪い苦笑いで受け流すと、再び険しい目つきとなっておのれの父親、四季博士の平然とした面持ちを睨む彼女だ。
 大体はいかにもまともそうなこの父だが、しかしその見た目とこの中身(特に、頭の…!)がまるで一致しないことを、娘の夏香はとっくの昔に承知していた。
 その見た目真剣な科学者面に、だが決して騙(だま)されてはいけないのだ。
 そう、もうたった今からでも何を言い出すかわかったものではないのである。
 この親父は…!
 彼女はふたたび幾分か身構えるようにして、博士へと向き直った。

「まあでもとにかく、この大ちゃんや洋ちゃんをオモチャにして遊ぶようなことは、人道的にも決して良くないんだし、迷惑なんだから、やめてよね!」

 ふたたび今度はしごくきっぱりと念を押してくれるのに、対する博士はその顔つきをこの娘と同様、ムッとしかめさせる。

「何を人聞きの悪い…! 大丈夫だ。ちゃんと考えている。着いたぞ!」

 逆にまたきっぱりと断言しつつも目の前のドアが開いたらすぐさまにだ。
 博士は洋太と大地を引き連れてさっさと娘の前らか姿を消し去ってしまう。

「まったくもう…何が、大丈夫なのよ? そもそも父さん、あなたは普段から考えてることそれ自体が危なっかしいんですからね!」

 精一杯の苦言も遠ざかる気配に届いたかどうか?
 それでこれから先を考えると頭が痛くなる思いで一杯の夏香は、困り果てたような視線をみずからの兄へと向けた。

「ま、なるようにしかならんだろ? あのオヤジさまに関しては、な…!」

 だがただ苦い笑いを満面に浮かべる春志は、やはりおのれの肩をどちらもわずかにすくめてみせるのみだったが…。


                     ※次回に続く…!