『メタル・キッズ・アーミー』 ‐第1話‐ ♯5
‐Metal×Kids×Army‐
『メタル・キッズ・アーミー』
‐第1話‐ ♯5
ピーン…!
到着を知らせる電子音が鳴るよりも早くにふたりともが外部へと飛び出していた。
かくして、最終目的地へと到着――。
「ついた!」
「とうちゃーく!!」
テンションマックスでご機嫌な洋太がいち早く飛び出していく。
その後を急がず焦らずの大地がゆっくりとした足取りで追いかける。
それで相棒が姿を消した角をみずからも左に折れると、そのすぐ先で洋太が誰かと向かい合っているのを見かけることとなる。
相手は若い女性で、なおかつこのふたりが良く見知った間柄(あいだがら)であった。
「あ、なつかおねーちゃん!」
自分たちよりはずっと年上だが、まだ若い二十歳そこそこだろう娘の名をやや見上げながらに大地が呼びかける。
これにあちらも笑顔で応えてくれた。
「あら、大ちゃんも。ふたりとも今日は早いのね。そっか、学校が早く終わったんだ?」
明るい笑顔で気さくな態度のお姉さんは、目の前に並んだふたりを見下ろしてはちょっとだけ表情を苦めもしながらに言った。
「ああ、でもね、あんまりうちの父さんにばかり付き合ってくれなくともいいのよ? だって学校、もうそれなりに忙しいんでしょう? また新しいお友達もできることだろうし、それに裏では何を考えてるんだか、わかったものじゃないんだから、あのひとは…!」
やや困ったような顔つきで小学生たちに対応する彼女は、大地の祖父にしてこの研究所の一切を取り仕切る統括責任者である、四季総合科学研究所・所長、四季 節夫(しき ふしお)博士の末の娘で、言うなれば大地の叔母に当たった。
ただし、見た目の通りにまだ若く、年齢は二十歳になったばかりである。
名を、夏香(なつか)といった。
ふたりの小学生たちばかりでなし、誰からも好かれる明朗快活な性格の持ち主で、頭脳明晰(めいせき)、均整の取れたスマートな身体に目鼻立ちの整った顔で、ショートにカットした髪が活発なイメージをより明るく際立たせた。
その名の通り、雲一つとなくからりと晴れ上がった夏の青空のようにはハキハキとした、もはや非の打ち所のない優しくきれいなお姉ちゃんだ。
その夏香の言葉に、ぶるんぶるんと首を左右へと振りながら、元気者の洋太がとびきり元気に答えた。
「ううんっ、へーき! だってあのおじーちゃんとってもたのしいもん!! ねー、大ちゃん?」
言葉のとおりにとびきりの笑顔をとなりのともだち、大地へと向ける。
それに当の大地はちょっとだけみずからの首を傾げさせては、やや思案顔で天井を見上げたりする。
それでもやがてははっきりと笑顔でうなずいた。
「うーん、まあよくわかんないけど…イヤじゃないから!」
そんな屈託もなくしたふたりのお子様たちに、ここではふたりの保護者の役も果たすお姉ちゃんの夏香はまた苦笑を漏らす。
「そう。まあ、それだったらいいのかしら? でもあまり無理はしないようにね? やっぱり、ちょっとは心配だから…そう、今日は特に、ね…!」
「うん!」
笑顔の大地が首を大きく縦に振って答えるが、その隣りの洋太はもうスタスタとその場から離脱していた。のんびり屋の大地と違って、こちらはあんまり長いことは、ひとつのところにじっとはしてはいられぬ性分なのだ。
さらに先へと廊下を進んで、やがては何やら広いフロアにまで出る彼だ。
そこは見渡す限りがずっと奥まで、多種多様、複雑怪奇にして大小さまざまな機器で埋め尽くされた区画へとごく当たり前に入り込む。
およそ小学生などにはふさわしくもないメカニカルな雰囲気のここは、俗に『C・R』、コントロール・ルームの名称で呼ばれるこの最上階でも最大規模のフロ アだ。その名のとおりで大型管制・統御室なのだが、現時点ではまだこれと言った運用はされていない。人影もまばらで、今のところはごく一部が試験的に稼働 しているのみだった。
つまりはこの『第二特殊研究棟』、ひと呼んで『マル(M・A・L=Metal・Armor・Laboratory)』自体がまだ新しい施設なのであり、このコントロール・ルーム全体が本格的に動き出すのはもう少し先のこととなる予定だという。
そしてその手前側、各種無数のモニターと計器らしきで埋め尽くされた大型の操作盤、子供からすればそれこそ機械の壁と向き合っているあるひとりの若い男へと、洋太は迷わずまっすぐに走り寄る。
「はるしにいちゃんっ!」
※次回に続く…!