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『メタル・キッズ・アーミー』  ‐第1話‐ ♯4 

       ‐Metal×Kids×Army‐ 
      『メタル・キッズ・アーミー』 

  ‐第1話‐  ♯4 



〝研究所〟と一口に言っても、そこはまだ手つかずの山林原野を含めて、航空写真の一枚くらいでは納まりきらないくらいに広大で地形の入り組んだ敷地だった。
 その中をぽつぽつと主要な施設が見かけランダムに点在するのだが、結構な距離を、警備員の車は所内での速度制限を無視した猛スピードで爆走!
 速やかにふたりの小学生をこの目的地へと送ってくれた。

「おじちゃーん、ありがとー!」

 もと来た道をこれまた砂煙を上げて走り去ってゆくジープにしばし手を振って、ふたりはくるりとこの踵(きびす)を返す。
 するとその目前には、地上37階からなる巨大なビルディングがそびえていた。

 

 

 このバカみたいに広い研究所内に数ある大型施設の内のひとつだが、他の建物たち同様にやたらにでかくてゴテゴテといかつい造りのそれは、およそ街中にあるオフィスビルのような愛想や洒落(しゃれ)っけなんてものがかけらもなくした、ひどく無機質な印象を与えた。
 足下から正面玄関へとまっすぐに続く階段、その右側の植え込みの中に設置された大きな岩石のオブジェには、この施設の名称を刻み込んだ金属製のプレートがはめられている。

 そこには、
 
      『 第二特殊科目研究棟 ― M・A・L 』
 
                 と、はっきりした表記がなされていた。

 しかし誰であれお子様などとはろくに縁がなさそうなその建物に、今しも洋太と大地のふたりはこの階段を玄関までタッタと駆け上がる。
 そうしてさも当然の顔つきで進入してゆくのだった。
 大きな自動ドアをくぐったらまた迷うことなくそのまま向こう正面のエレベーターへと一階ロビーを突っ切った。
 どちらも脇目も振らずにまっすぐにだ。
 まったくこんな突如として現れた場違いなランドセル姿の小学生コンビであるが、それでも中に居合わせた人間たちは誰もが別段、これにさしたる気を払うような様子がない。
 もはやすっかりとここの日常に溶け込んでいるのだった。

「うんっ、と!」

 見かけ同じようなものが三基並んである内、一番右端のもののボタンへと大地が背伸びしてタッチする。
 そのエレベーターだけが、地下二十階、地上三十七階からなるこの研究棟、一階ロビーからある特定の階までを直(じか)に結ぶ専用機となっているのだ。
 ほどなくしてドアが開いた。
 ふたりはただちに、ぴょんっ! とこの中へと飛び乗る。
 行く先はただのひとつなので、ドアが閉まると後は何らの操作もなしにエレベーターはすぐにも上昇を開始する。
 ただちにゴガガーッと低く重たい駆動音が鳴り響き、浮遊感というよりはある種この身体を強く押さえつけられるような重圧感を受けた。
 通常のそれよりもかなり速い速度で上昇しているためだ。
 よって一階から最上階まで、実に七秒足らずで登り切った。

 …ゴガンッ!

 不意に何かにぶつかったような衝撃音と共に、現実に少々この室内が上下へと揺れる…!
 瞬間、ふたりの小学生の身体がまるごと空中に浮き上がるほどだ。

「わうったた!」

「あはっ!」

 まともなら仰天するところだが、いい加減に慣れているらしく、むしろ楽しんでいる様子か。うまくバランスを取りながら、しっかりと両足で着地!
 室内の揺れが収まるか収まらないかの内に、フライング気味に左右へと開くドアへと向けてつま先を蹴り出していた。

 ピーン…!

 到着を知らせる電子音が鳴るよりも早くにふたりともが外部へと飛び出していた。
 かくして、最終目的地へとめでたく到着――。

「ついた!」

「とうちゃーく!!」

 テンションマックスでご機嫌な洋太がいち早く飛び出していく。
 その後を急がず焦らずの大地がゆっくりとした足取りで追いかける。
 それで相棒が姿を消した角をみずからも左に折れると、そのすぐ先で洋太が誰かと向かい合っているのを見かけることとなる。
 相手は若い女性で、なおかつこのふたりが良く見知った間柄(あいだがら)であった。

「あ、なつかおねーちゃん!」 


                      ※次回に続く…!