『メタル・キッズ・アーミー』 ‐第1話‐ ♯3
‐Metal×Kids×Army‐
『メタル・キッズ・アーミー』
‐第1話‐ ♯3
「よいっしょ!」
気合い一発! 重たい看板も力持ちの大地の手にかかれば、すぐさま元の状態へと立ち戻る。
「うん、それじゃいこう!」
それを横から見届けた洋太が背後に向き直ると、この広い敷地内をぐるりと見渡しはじめる。するとほどなくやや前方を走る一台のジープを見つけて、彼はその運転手へと声を一杯にして叫ぶのだった。
「おじちゃーんっ! のっけてーっ!!」
そんなぴょんぴょんとはね飛びながら両手を振って合図するものの、呼ばれたジープははじめ何事もないかのように視界の中を右から左へと走り続ける。
が、これがややもすればいきなりに急停止することとなった。
おまけそこからもの凄い勢いでこちらへとバックしてくるのだ。
後ろ向きのままでふたりのそれこそが寸前、スレスレを四つのタイヤをきしませる急カーブ切りながらに急停車した!
とんでもなく荒っぽい運転に、大地などはうわっと声を上げてしまう。
ジープの巻き起こす風とタイヤとアスファルトのつんざくような不協和音にひやっとする小学生だ。
対してそんな無茶な運転をかましてくれる運転手は中年のおじさんで、独特な渋い茶色のユニフォームを着込んだここの警備員だった。
見てくれからしたらいかにも屈強な体格した軍隊経験者なのだが、そのやや気むずかしげなツラをした男は、このふたりの闖入者(ちんにゅうしゃ)の顔をただの一瞥(いちべつ)しただけで、すぐにしごく納得のいったさまの了解してくれる。
「おまえさんたちは、ああ、やっぱりうちの所長さんとこのお孫さんたちか! いやはやこいつは…」
本来ならば民間に所内(一部区域は、除外)を公開する一般公開日以外には、ふたりのような民間人、ましてやお子様がいることなどありえないのだが、いい加 減にこの四季総合研究所の所長である、四季博士のお孫さんたち(厳密には、洋太は違うのだが…)として顔が広く知れ渡っている小学生たちは、完全なる例外 であった。
それだから専用の抜け道(ルート)で出入りし、警備のスタッフにもこうして顔パスがきいてしまう。
警備員の男はこのしたり顔したふたりの男子児童からその背後、そこのフェンスにでかでかと大穴が穿(うが)たれているのを見ると、またもや納得のいったそぶりで笑う。
やや苦笑い気味にだが…。
「は~ん、なるほど…! さてはおまえさんたち、いつもそこから出入りしてるってわけか、まったくこそ泥みたいだが、さすがにあっちの正門使うのはダメなんだな? 関係者以外は原則立ち入り禁止って都合…」
「うん。おじちゃん、のっけて!」
納得すると同時に少なからずや呆れた相手の言い分にも、いかにも小学生小学生した屈託のない笑顔でおねだりする洋太だ。
ここらへん、みじんもてらいがない。
これに苦笑いの中年警備員も面倒そうなそぶりを一切(いっさい)見せずに、そこは実にあっさりと快諾(かいだく)してくれた。
「合点! 元からそういうお触(ふ)れは出ているんだ。怪しい小学生の二人組見つけたら、迷わずこれをしかるべき場所に連行しろってな…!」
「あんがと!」
「おじさん、どうも。でも安全運転でおねがい!」
※前回、前々回の挿し絵で小学生の必須アイテムであるランドセルを描き忘れていることに気が付きました…不覚! 今さら描き足しています(笑)♡
礼を言うなりにジープの後部座席に乗り込むふたりだ。
背負っていたランドセルを胸の前に抱きかかえて、洋太は元気に行き先を指定した。
「そんじゃおじちゃん、ぼくたち『まる』に連れてってよ!」
「おうよ、『MAL』だな! わかってるって、ひとっぱしりだ。超特急で送ってやるからふたりともしっかりつかまっとけよ!!」
言うなりして車はアクセル全開で急発進!
後に多大な排気と砂煙とを残し、ふたりを乗せたジープは広い所内を一気に突っ走った。
※次回に続く…!