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『メタル・キッズ・アーミー』 ‐第1話‐ ♯2 

       ‐Metal×Kids×Army‐ 
      『メタル・キッズ・アーミー』 


  ‐第1話‐  ♯2 

 

 このふたりはそれこそが物心つく幼少からの大の仲良しコンビであるが、現在はつい先日、共に小学校の二年に上がったばかりで、今日はその新学期も二週目の月曜、学校が終わってからの帰り道だった。
 だが帰りとは言っても、自分たちの家とはてんで逆方向へとふたりは駆けっていたものだが…。
 今彼らが闊歩(かっぽ)しているのは、実は町の外れも外れ、通常は一般の人間などが立ち入ったりはしないような特殊な区域である。
 本来ならば、立入禁止にすら近い領域(エリア)だ。
 そもそもは大地の祖父のもとへと向かっているのだが、しかしこの場所柄(がら)が示すように、普通のおじいちゃんの家(ウチ)に孫がともだち連れて遊びに行くというのとは、ふたりはまったくにその様相を異(こと)にしていた。
 それはもう、かなりもって…!
 どのように異にしているかは、これから後すぐにもわかるだろう。
 それまで見渡す限りに何もなかった野っぱらは、これがまたしばらく行くとこの左手に何かしらした大きな建物が、幾つも見え隠れするようになる。
 そうしてまたさらには、ひたすら長いこの幹線道路に沿って、だーっと張り巡らされた頑丈で背の高い鋼鉄製フェンスでもって、その敷地と外部とをきっちり隔離されるようにもなった。
 また同時、彼らの背丈ほどにも生い茂っていた緑の草原が一気に拓(ひら)け、一遍には見渡しきれないほどのそれは灰色をした新たな景色が展開する。
 明るく燃えるような自然の草木の色から、暗いがまた別の活気に満ちた、人工世界の色へ…!
 果たして人里離れたこんな辺鄙(へんぴ)な場所で、それこそがひたすら広大な敷地面積を有する、視界を圧倒するほどの大規模な巨大施設だった。
 この圧倒的な眺望を前に、それを臨みながらに走る洋太の顔がパッと明るくなる。
 さらにスピードが増した! 



 まるでお子様が大好きな遊園地を前にでもしたかの反応だが、実はそうではない。
 たとえ洋太やこれに後から追いすがる大地の目にはそのように見えていて、またこのふたりの小学生の認識がまさにそれだったとしても、それはあくまでまったくの別モノである。
 では一体、それは何なのか?
 一見したところでは怪しくもあるそれは、もはやその存在だけでもひとつの疑問となりうる。
 が…!
 その答え、実体についてはいささかも隠すことなく、フェンスに大きく張り出された看板によってでかでかと明示されていた。まだ小学校も低学年のふたりにはよくわからなかたが、びっちりと漢字で書き連ねられたそれには――


 『千葉県 内海市(松山)北ノ原 ‐四季第一総合科学技術研究所‐ 所在地』


 ――と、記されている。
 しかるにそれだけでは何のことやらさっぱりだが、目下(もっか)、こここそが、この仲良しコンビがしゃかりきになって目指している目的地なのであった。
 高いフェンスに沿って走る洋太は、やがてこの前方に敷地内への正面玄関を認める。
 通常は関係者のみが出入りが出来るやや物々しい検問所があるそこは、現在は無人化されて誰もいないのだが、彼は目もくれずにその前を走り抜ける…!
 そうしてそこからまた少し先にまで進んだところで、洋太はようやくその足を止めた。
 背後をくるりと振り返る。

「ねえっ、大ちゃん、はやくはやくうっ!」

 遅れること一分そこそこでやっと後から追いついてくる大地に呼びかけて、みずからはすぐ傍らのフェンスに立てかけられた、一枚の大きな立て看板に両手を当てた。それは見るからふたりの背丈よりもずっと高さがあって、かなり重そうなものなのだが――。

「う~んっ……!」

 どうにかしようと踏ん張る洋太に、後から駆けつける大地も一緒になってこれに取り付く。

「う、うんっ、そおっれっ!」

 身が軽く、やたらチョコマカとすばしっこい性分の洋太と比べ、これより大柄で背丈も高い大地は体つきががっちりしているぶん、腕力のほうも強かった。それで途端にぴくりでもなかった看板がミシミシと音を立てて動き出す…! 

「よいしょっと!!」

 ふたりは一気にそれを手前へと引き倒した。
 立てかけられていたフェンスから起こされた看板は重力によりそのまま前へと、ひいては地面へと倒れるべく傾(かし)ぐのだが――。

 …ガシンッ!

 そう音を立てるとそれきり真横に倒れることもなく、地面から45度の角度でもって制止する。つまりはあらかじめにこの上側の両角が、二本の太いチェーンで背後のフェンスとしっかり繋(つな)がれていたのだ。

「よっし、入ろ!」

 これに洋太が即座、どかした看板とフェンスの間に入り込む。
 それまで大きな看板の背に隠れて分からなかったが、その隠れた後ろの部分にはちょうど子供が背を屈めて楽に出入りできるくらいのスペース、それなり大きな穴がぽっかりと空いていた。
 いわゆる隠し通路とでも言うべきものか?

※雑な絵です…! もはや雰囲気だけ♡
 

 よってこの抜け穴を利用して、まんまと研究所の敷地内に潜り込む小学生だった。それに大地もすぐさま続くが、ちよっと苦労して穴に身体をはめ込んでから、それからふと背後で傾いだままの看板を振り返った。

「カンバン、元にもどさないとねっ!」

 そうしてみずからの足下に落ちていた一本の縄を摑み上げた。先をたどると、それはこれまたフェンスの穴を通って看板本体へとつながっている。大地はその場に腰を落として縄を握り直すと、それを綱引きの要領でグイグイと引き寄せはじめた。

「よいっしょ!」

 気合い一発!
 重たい看板の力持ちの大地の手にかかれば、すぐさま元の状態へと立ち戻る。

「うん、それじゃいこう!」

 それを横から見届けた洋太が背後に向き直ると、この広い敷地内をぐるりと見渡しはじめる。するとほどなくやや前方を走る一台のジープを見つけて、彼はその運転手へと声を一杯にして叫ぶのだった。

「おじちゃーんっ! のっけてーっ!!」


                                          ※次回に続く…!