おおぬきたつや の ブログ玉手箱♪(はてな版)

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クロフク 第二話 ①

 キビシイ夜勤のお仕事を乗り越えて、今になってネットに復帰したのですが、リアルでは風邪を引いてしまいました…ショック!

 どこで伝染されたのかわからないので、どの薬を飲めばいいのかわかりません♡

 とりあえずメジャーなラインは取りそろえているので、はじめの総合感冒(この感冒(かんぼう)、インフルエンザや風邪の意味であるのを今になって知りました(笑)! て、インフルエンザにも効くんですかね??)から一番の症状である喉の痛みを一番に歌っている(成分としては、イブプロフェン?)のに切り替えたら、効果覿面だったみたいです♪ なにはともあれ作者イチオシのラノベ、スーパーデブの登場です♡

 よそのサイト、メディバンなどでは現在第5話まで無料で公開中です♪

 縦書き、ルビ付き、挿し絵付き♡♡    

 

 

     クロフク

 *プレリュード*

    第二話 ①

 

 

 出会いは、最悪に近かった…!

 

 しょっぱなから解雇を言い渡してやったほどにだ。
 なのにそれを涼しい顔でビクともせずに受け流す大男を、見上げる少女はどうしたものかとしばし困惑のさまで見上げてしまう。
 でかい図体で、言ってしまえばでっぷりと下腹(したばら)の突き出た絵に描いたような肥満体を上下とも地味なフォーマルの黒服でまとめた男は、今となってはどうにも取っつきにくいいかめしい雰囲気をこの全身にまとっている。
 さっきは平然とやたらな口答えをかましてくれたものだからその驚きで気にも留めなかったが、こうして無言で見つめ合うと異様な圧迫感を感じた。
 気圧(けお)などされまいとキッと強い視線で見つめるのだが、無言で微動だにしない相手はまるでお山のごとくしてそこに居座ってくれている。
 おかげでもうちょっと首が痛かった。
 このまま消耗戦の我慢くらべでは精神的にも体力的にもいささかこちらが不利なことを認めざるおえない薄幸(はっこう)のヒロインだ。
 仕方もなしにまたこちらから仕掛けるはめとなる。

「ねぇ、あなた、仮にもわたしのボディガード、なのよね? だったらそんなトコにいつまで偉そうに突っ立ってないで、なすべきことがあるんじゃないの! くだらない口答えばっかり一人前で、それじゃこれまでの無口なお人形さんたちのほうがずっとマシだったわ…!!」

「…………」

 いかつい肥満の巨漢はただ無言を貫いてくれた。
 いかんせん無表情だから何を考えているかは定かでない。
 さっきはあんなに冗舌(じょうぜつ)だったのに、もはや打って変わったキャラの変わりようだ。

 まさか、寝てやすまいな…?

 反射的に勘繰(かんぐ)ってしまう少女は、細い肩を怒らせて内心のイライラがピークにまで達してしまう。

 

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「ちょっと、あんた!」

 いくら人気のないがらんどうの大広間だからとそんなヒステリックな声を上げてしまいかけるに、目の前の動かぬ山が、黒服男がピクリと反応する。
 寡黙なエージェントには付きものの大判のサングラスでこの目元を完全に隠して、どこを見ているともつかない無表情でもこちらを暗いグラス越しに見返しているのか、落ち着いた通りのいいバリトンを返してくる。

「人形ではないと言ったはずだが…ましてや、あんた、でもな? 悪いがこの俺にはれっきとした名前がある。モノではないのだから、声を掛ける時はそれでお願いしたい。それが対等な人間対人間(ひと たい ひと)の付き合い方だろう?」

「名前? そんなものは主人に付けてもらうもんでしょうにっ! あんたってほんとにお人形さんじゃありゃしないわね? 可愛げってものがまるでありゃしないもの! いいえそもそも名乗りもしないで何を言ってるのよ!! それによくもいけしゃあしゃあと、そうだわっ、よりにもよってこのわたしとあんたが〝対等〟って、なにごとよ!?」

 これまでのご多分に漏れることなきごく当たり前な主人と使用者の位置関係で臨んでいたはずが、その前提をおよそ根底から覆(くつがえ)すかの暴言だ。
 それを相手があんまりにもしれっと言ってのけるから、危うく聞き流してしまうところだった。
 キリキリと柳眉(りゅうび)を逆立てて不服および不平不満を申し立ててやるに、相手はその一瞬、かすかにこの口もとがほころんだものか…?

「ああ、それは失礼した…! ただしそれがおまえのジジイ、いや、おじいさまのたってのお願いだ。しっかりとこの契約の内に入っている。おまえをきちんとした一人前の、ひとりの人間として扱うこと、ついでに追加条件としてこちらもれっきとしたパートナーとしてこれと対等に相対(あいたい)すること。これは俺が提案した。それこそ必須条件だろう。自分勝手で小生意気なお嬢さまなどはただ世話が焼けるだけだからな? これからの任務に多大な支障を来(きた)す…!」

「契約? 任務?? なっ、なんなのっ、あんた、何を言って…!?」

 少なからぬ衝撃に唖然となっているところに、すっかりと冗舌さを取り戻した黒服の巨漢(デブ)はさらなるカウンターを浴びせてくる。


「それとこの俺のことは、クロ…! そうだ、クロと呼ぶがいい…。それがこの俺がこの世界で自我を得てからの正式な通り名だ…!! この俺たちの特殊な出自(しゅつじ)のことは、それなり把握しているのだろう? そう、確かに見ようによっては人形かも知れないが、世間的にはちゃんと人間のなりをしている。無論、この中身もな? そのあたりを誤解されたままではこの先良好な関係などを保っていけるはずもないので、まずははじめに言っておくぞ」

「ちょっ、なによっ、さっきからずっと好き勝手ばっかり…!」

 聞きようによっては理解することすら困難なびっくり発言のてんこ盛りだ。

 それらをまるで当たり前みたくさらっと言ってのけるのに、もはや混乱のさまが著(いちじる)しくしたパニック寸前の少女である。
 こんな展開はおよそ夢にも思わなかった。
 ただ退屈で、ひっそりと閉じこもった人生を虚しく過ごしていく…!
 そんな自由を無くした鳥かごの小鳥のような生活が、この先もずっと続いていくものとばかり思っていたのに…!?
 引きつった口もとに、だが束の間(つかのま)、かすかな笑みがこぼれた。
 黒服の男は果たしてそれを認めたものか?
 少女を真正面からまっすぐに見下ろして、やがて問うのだ。


「さあ、ここまで理解はできたか? それではそちらも名乗るがいい…! その時点をもってこの契約は正式に成立、完全に遂行されるものとする…!! この先、永遠に、強(し)いて言うならおまえが満足するまでだな? ちなみにそれにつきこちらから解除を申し入れることは間違ってもないので、安心してくれていい。ある意味、終身雇用だな? そう、おまえのジジイはおまえにそれほど莫大な財産と想いを残してくれたのだ。感謝するがいい。俺は感謝している…どうした?」


 無表情なサングラス越しに問いかけてくる肥(こ)えた丸顔の大男だ。
 驚きとかすかな興奮がない交ぜになった顔つきに、まだあどけなさまでが残る若い娘は、若干の間を開けてこれに真顔で応じることとなる。


「あんた…ちょいちょい言ってることが矛盾してるわよね? でもいいわ! 今はあえて乗ってあげる。契約は、たった今、成立よ…!」


「そうか…では、お名前をお聞かせ願いたい…! 今この瞬間、地位や名誉は無くしたとしても、その身と自由だけは最後まで守り通そう…おまえをこの巨大なカゴから救い出すこと、これがまず課せられた第一の使命だ!」


「無表情でよくもそんなぬけぬけと! あんたってほんとにふざけてる。ボディガードと言うよりは、まるでナイト気取りね? ええ…望むところだわ! ならばわたしのことは、ルナ…そう呼んでちょうだい…!!」


 果たして契約は無事、成立したものか。
 うむ、と無言でうなずく大男に、だが主従ではなくパートナーとしての関係を受け入れたはずの娘、ルナはすかさずひとつの要求を申し入れた。


「あんたのことは、クロ、クロって呼べばいいのよね? そう、だったら、ねえ、クロ! まずはそのジャマで目障りなサングラス、取ってくれない? あんたたち黒服ってただでさえ無表情なのにそれが目線をさえぎって、もはやさっぱり何を考えてるかわからないじゃない? 意志の疎通が困難だわ! そもそもこのレディを前に対等な関係を望むなら、まずはその素顔ぐらい見せるのがスジってものでしょう? みずからの名を名乗るのと同等なくらいに、ね??」

 

       ※次回に続く…!